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更新日:2020年8月24日
2反の圃場に、もふもふの草。「草生栽培」という敷地内に生える雑草を除草しない方法を採用した果樹園でつくられるのは、農薬の散布を減らす特別栽培農法の種あり巨峰だ。「誰もが『美味しい』と思ってくれると思う」と語るのは、就農一年目の寺内秀行さん。産地と生活者が待ち望んだ、ぶどう“本来”の美味しさを味わえるぶどうがここにある。
片手でもラクに食べられる「種なし巨峰」の手軽さのかたわらで、影をひそめていた「種あり巨峰」が、今ふたたび熱視線を集めています。
「僕、実は就農一年目。今年が初出荷になります。『種あり巨峰』の生産者になる前は、川越でクルマの設計に関わっていました。某車種のカーオーディオの製作を行っていたのですが、みんなでフォローし合いながら、ひとつの製品をつくり上げられたことはとても素晴らしい経験と学びになりました。
その後、自身のキャリアプランの見直しを行っているうちに別の道もあることを考え始め、思い切って退職しました」
こう聞かせてくれるのは、栽培が難しく手間のかかる「種あり巨峰」を独自の栽培法で生産する寺内秀行さん。今年1月に農業大学校の学びを終了したという寺内さんは、全くの異業種から就農した挑戦者であり、産地と食品のプロが期待を寄せる新星です。
きっかけは農業大学校のフィールドワークの授業。
「色々な農家さんのところへ行って話を聞いたり、お手伝いをしたりする授業がありました。とある日、『誰かこの畑やる人いる?』と農家さんが私たちに向かって聞きました。私はもちろん手をあげました」
2反の広さの圃場、初めての作業。「もともと一人ではできないと思っていた」と言い切る寺内さんは、親密になった近所の農家や勤め先の果樹試験場などからも様々な知識をインプットしながら試行錯誤を繰り返しています。
「ここにたどり着くまで“奇跡”と言いたくなるようなことの連続でした。例えば、就農を決める前にお伊勢参りに行ったら、神様に背中を押されたことであったり、農園を手伝ってくださる農家さんとの繋がりであったり。すべて、何が欠けてもこうはならなかっただろうと思います」
そう話す寺内さんは「何事もまずは自分から動くというスタンスが大事」と続けます。
寺内さんの「種あり巨峰」がもたらしてくれる味の体験は、ただ甘いだけではなく、甘みと酸味が絶妙なバランスを保つ奥深いもの。パッと口に放り込んで味の濃さに気づき、コクを感じることもできます。
「種あり巨峰が減ってしまったのは、種無し巨峰の方が食べやすいというのもあるかもしれませんが、種ありはとにかく手間がかかる。けれど、巨峰の本当の甘さと味、香りは、種あり巨峰を食べてこそ味わえます。一度食べていただければ、誰もが美味しいと思うと思う。これほど手間がかかるとは思っていませんでしたが、僕の育てた巨峰が誰かを笑顔にできるなら、いいか」
失われつつあった種あり巨峰の生産に乗り出し、一年目にして早速続々と出荷。就農以前に鍛え抜いた観察力や課題解決力を武器に、地域の人と関わり、応援を受けながら第一歩を踏み出した寺内さん。
皮が柔らかく、色が濃く、香りも甘みも強い。「種なし」の方が食べやすいことを承知した上で、やはり寺内さんの「種あり巨峰」は一度味わってみてほしい逸品です。
■今回ご紹介した施設情報
・施設名:桜叶ファーム(おうかふぁーむ)
・代表者:寺内 秀行(外部リンク)
・施設住所:406-0036 山梨県笛吹市石和町窪中島251-8
◎この記事を書いた人
小栗 詩織(おぐりしおり)
コピーライター/2015年10月よりフリーランスとして活動。県内外の企業の広告企画・SNS運用・コピーライティングに携わる
特産品の果物や伝統工芸品だけではなく、ワインや地酒など山梨の美味しいが揃っています。
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