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更新日:2023年10月25日
第50回信玄公祭りの記念回のポスターは、モデルで俳優の冨永愛さんが演じる武田信玄公がイラストで描かれ、ポスターの問い合わせも多く今までにない大きな反響がありました。
冨永愛さんの凛とした武者姿と躍動感のあるタッチが印象的なイラストを描いたのは、世界的アーティスト・田村大さん。
似顔絵の世界大会である「ISCA カリカチュア世界大会」にて2016年総合優勝し、アスリートを描いた作品がSNSを中心に注目を集め、現在はNBA公認イラストレーターを務め、ナイキなど国内外の著名ブランドや著名人とのコラボレーションを実施し世界的に活躍しています。
そこで、田村大さんと、ポスターデザインを手がけた(株)アドブレーン社 デザイン部部長 五味竜康さんに話を伺いました。
描いたことのないものにもチャレンジしたいと思っていて、武者姿であれば甲冑など色々な要素が入ってくるので、出来るかどうか自問自答しました。今までチャレンジをする選択をしてきたので、やろう!という気持ちでした。
僕は、具体的な対象がある方が得意なので、より力を発揮できるなと思いました。女性が演じる信玄公なので、男性っぽいゴツゴツした感じが出ないように、曲線だったり、上品さの中に強さを表したいなと思ったんです。特に、目の表情で力強さを表現しました。
田村さんが描いたメインビジュアル
(イラストを描くにあたり、実際に冨永さんが乗馬している写真が無かったため、デザイナーの五味さんが、男性が乗馬している写真と冨永さんの顔を細かく合成し、参考画像を作成したそうです。五味さんのサポートにより、忠実に再現した部分と想像した部とミックスして描いたと田村さんは言います。)
ポスターでは、全身が使われない可能性があると聞いていましたが、見えなくても冨永さんの腕の先と馬の足先まで神経を尖らせ、力を抜くことなく描き切ろうと。見えなくても描いている事実はエネルギーとして伝わると思っているので、結果として全身が使われたビジュアルもありましたが、絵に向き合った姿勢が良かったのかなと思います。
カリカチュアという技法は、誇張するという意味でユニークなアメリカンスタイルがルーツなのですが、オフィシャルで企業や著名人とコラボレーションする場合、いろいろな方のチェックやその方のファンなど、多くの人に喜んでもらわらなければならないので、誇張をやめ、とにかくカッコ良く、美しく描くスタイルに変えました。
それが独立した6年前で、似顔絵の世界大会で優勝した時のトロフィーまで捨て、もうそのスタイルには戻らないという決意をして、今のスタイルにいきつきました。トロフィーがほしくて頑張ったのですが、おかげさまでいろいろなコラボレーションが実現しているので、思い切って良かったなと思っています。
アスリートを描くことが多かったので、躍動感が最大のテーマでした。それをどう表現したらよいかと日々考えていたところ、人物の輪郭に斜線を足したり、背景にある黒い点々を加えることでより躍動感を表せるようになりました。今では、斜線と背景の黒い点々があれば、サインがなくても僕の絵だと気づいてくれる人も多くなりました。
信玄公祭りの昨年の観客動員数は17万人、関わっている方も入れると非常に多くの方が想いをもって参加されているので、全員に喜んでもらいたいところですが、色々な好みがあり難しいので、冨永愛さんご本人に喜んでもらえることだけを考えて描きました。そうすると、日本を代表するモデルの冨永さんが喜んだ絵というのが皆さんが嬉しいと思うので、結果的に皆さんに喜んでもらえる絵にいきつけると思っています。
シンプルに、描くモデルに喜んでもらいたい、いつもそれしかないです。強いメッセージのこもった絵になるので、多くの人に伝わるのだと思います。
第50回信玄公祭りポスター
絵だけの制作期間でいうと、3日間ぐらいです。菱丸の絵は1日かからないくらいで描きました。
今回の信玄公祭りが最高のお祭りになることを願い、その一部を担えたのならら嬉しいです。これから先も皆で作り上げてずっと続いていってほしいという気持ちでいっぱいです。
田村 大 さん Dai Tamura
Instagram約20万人、うち海外フォロワーが9割を占め、NBA公認イラストレーターを務めるなど、スポーツアートにおける世界的アーティスト。 2016年アリゾナ州フェニックスにて行われたISCAカリカチュア世界大会にて、総合優勝。ペン・カラーマーカーを用いてダイナミックに手を動かして描く、躍動感あふれるスタイルを最も得意とし、 日本を代表する選手である八村 塁や渡邊雄太を始め、ステフィン・カリーやシャキール・オニールなどの著名なNBA選手からも高い評価を受ける。 その他、メンフィス渡航時にはNBAからの密着取材を受け、NIKEのジョーダンブランドとのオフィシャルコラボレーションの実施や、Bリーグにおいて月間MVPの選考委員を務めるなど、バスケットボール分野での実績を多数保持。 また、バスケットボールに留まらず、野球、サッカー、テニスなどのイラスト制作にも着手し、ロジャー・フェデラー選手のツアー100勝達成時には公式サイトに記念イラストが掲載された他、日本オリンピック委員会(JOC)とオフィシャルコラボレーションを行うなど、スポーツ全般へと活動の幅を広げている。 2021年には自身初の作品集を発売し、同時期に実施した個展も大成功を収める。HUBLO、FENDIなどの高級ブランドとのオフィシャルコラボレーションを行う他、BTSのジョングクがSNSでイラストを紹介するなど国内外の著名ブランド・著名人とのコラボレーション実績も多数。 |
今回のポスターデザインを手がけた五味さんへ、ポスターへの想いや田村さんへイラストを依頼したきっかけなどを伺いました。
会社としては今までも信玄公祭りのポスターを制作してきたことがありますが、個人としては実は初めて関わりました。50回の記念回なので、「50」という数字を強調したデザインをイメージしていました。
ポスターのデザインコンペに参加することが決まり、「武田菱丸」(山梨観光キャラバン隊長)を使用することがコンペの条件の中に含まれていたため、菱丸を使いながら昨年までとは違ったテイストで、武田信玄公をどうやってデザインにいれていくか考えていたところ、ふと、田村大さんが描いてくれたらおもしろくなるな、と思いつきました。
私自身がもともと絵を描くこととスポーツも好きだったので、数年前にインターネットで田村さんの記事を見つけ、田村さんの絵に衝撃を受け、こんな絵が描けるんだ!と羨ましい気持ちとともに、一発で魅了されました。そこから、いつか田村さんの絵でデザインができたらと思っていました。
田村さんのイラストなら、勇猛なイメージの信玄公と、かわいらしい武田菱丸を、カッコよく勇ましく、両立できると考え、田村さんにオファーしました。するとその日のうちに「カッコいい信玄公を描いてみたい」と快諾してくださり、一緒に制作することが決まりました。
しかし、田村さんからOKをもらった後、迷いが生じました。それは、信玄公祭りのポスターの背景色は黒色が多く、田村さんの特徴である強調線(人物の輪郭から出ている斜線や背景の黒い点々)が生かせないと。そこで、田村さんのイラストをより生かせるデザインとレイアウトに方向転換し、他社との違いを出すため、背景は白にしました。
田村さんは、見たものを正確に描いていくスタイルなので、信玄公の素材写真に、より正確なものを用意する必要があります。グループ会社の写真データから、イメージに合う、武者姿の男性が乗馬している写真を借りて構成をスタートしました。
デザイン案提出の数日前に、冨永愛さんが信玄公役に決まったため、派手目のメイクをしていない、男性っぽいイメージの写真を探し、武者姿の写真と合成したものを田村さんへ送りました。顔は”賭け”でしたね。特に首が出ると女性っぽさが出てしまうので高さのある襟を組み合わせたり、風に揺れる後ろ髪を描き足したり、細部にも気を配りました。
自分がイメージした素材写真を見つけられたこともポスターの成功に繋がったのだと思います。
また、菱丸も描いてもらったことで、田村さんの躍動感のあるタッチで、カッコいいものとかわいさのあるものが上手く調和しました。
冨永さんが演じる信玄公が、ポスターの中で美しく、かっこよく、勇ましく表現できていれば、歴史あるこの信玄公祭りがもっと知ってもらえるし、実際に来てもらえるはず。そんな想いを込めてデザインしました。
広告は、対象となる表現の中にギャップがあればあるほど反響をおこすと考えているので、冨永愛さんと信玄公さらに、田村さんのイラストの掛け合わせが大きな反響を呼んだのだと感じました。今回の制作にあたり、トップモデルの冨永さんが信玄公に、世界的アーティストの田村さんがイラストを引き受けてくださったこと、いろんな奇跡が重なって、こうなったらいいなと思っていたことが実現し、デザイナー人生において満足できる作品となりました。
また、山梨生まれのデザイナーとして、山梨を代表する信玄公祭りにいつか携わりたいと思っていたので、50回の記念回に個人として初参加で実現できて、喜びの気持ちでいっぱいです。
五味 竜康 ゴミ リューコウ
株式会社アドブレーン社 企画制作局デザイン部
アートディレクター/デザイナー
公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)会員 2016年からはアドブレーン社へ配属。現在は、県内企業および県市町村などの広告やポスターなどのグラフィックデザインをはじめ、パッケージやロゴ、ブランディングなど制作は多岐に渡る。また、Jリーグ・ヴァンフォーレ甲府のサポーターとして、スローガンデザインや、夏季限定ユニフォームのデザイン、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)を戦うチームのアートワークも手掛けている。 |
冨永愛さんもご自身のインスタグラムでこのポスターを「お気に入り」と発信していましたが、「その発信までの過程にたくさんの方がに関わり、僕は絵の部分だけで皆さんとの共同作品だと思っています。」と話す田村さん。終始、謙虚さと人柄の良さがうかがえるインタビュ―でした。
デザイナーの五味さんが話す「奇跡」が重なった作品。二人の想いが伝わってくるポスターをぜひ、信玄公祭りの会場でもご覧ください。
武田菱丸も描かれています。写真ともイラストの平面的な菱丸とも違う、新しい菱丸の魅力を発見できました。菱丸にも注目してみてくださいね。また、甲府駅ビル「セレオ甲府」の2階では、田村さんの描いた冨永さん等身大のパネルが掲出されています。フォトスポットになっていますので、信玄公祭りにお越しの際はお見逃しなく!
冨永愛さんへ贈呈された田村さんのイラスト原画
「信玄公祭り」は山梨が誇る戦国武将・武田信玄公の遺徳を偲び、甲府駅周辺や舞鶴城公園を会場に例年開催されているお祭りです。メインイベントの「甲州軍団出陣」は、県内各地から1,000名を超える戦国武者姿の軍勢が舞鶴城公園に集結し、川中島に向け出陣する様子を再現します。華麗ななかにも勇ましい一大戦国絵巻がくりひろげられます。
第50回は、武田信玄役にモデル・俳優の冨永愛さん、山本勘助役は俳優の 白須 慶子さんが務めます。
開催日:2023年10月27日(金)~29日(日) |