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更新日:2021年1月28日
覚林坊(かくりんぼう)は日蓮宗総本山の身延山久遠寺の門前にある550年の歴史ある宿坊です。身延山は東京から車で約2時間半。歴史や文化、自然豊かな富士山を望める町です。
そもそも宿坊とは、参拝者や僧侶が宿泊する寺院の宿舎でしたが、現在では国内外を問わず、一般の方々も利用できる施設となっています。その宿坊が減りつつある今、新たな宿坊の可能性について副住職の樋口是皐(ぜこう)さん、女将の樋口純子さん、従業員の遠藤史哉さんに話を伺いました。
是皐さんはお寺の現状や来訪者が減り衰退しつつある身延のまちを目の当たりにして「宿坊やお寺と向き合い、色々な取り組みを通じてまちに貢献したい」と考えるようになったのは大学進学を考えたときだったそうです。
その考えに純子さんは「是皐さんが帰ってきたときに、まちやお寺が“砂漠状態”では申し訳ない。後を継ぐ決意をしてくれたおかげで、私も覚林坊を変えていく決心がついたのです」と思ったそうです。
そこから「身延に賑わいをつくる」を目標に掲げ、地物を使った精進料理を堪能できる「おてらんち」を始めました。「おてらんち」は、地域の特産品である「あけぼの大豆」を生かした「自家製あけぼの大豆の手作り納豆」、「湯葉」、「山梨のフルーツを使ったコンフィチュール」など全て手作りの料理を提供する新しいランチの取り組みです。
また、夢想国師の日本庭園を見ながらお食事や宿泊を楽しめるように席のレイアウト変更をし、足に負担がなく座れるようテーブル席を設置するなどしたことにより、海外からの利用者に評判が広まり、ファンやリピーターが増加しました。
―おてらんち―
営業日時:11:00~15:00(LO.14:30)不定休 お一人様1,900円(税別)~
宿の外にあるこのテラスが生まれた発端は東日本大震災により、恒例行事だった身延山の桜ライトアップが中止になったことです。
身延山久遠寺周辺は、「日本さくら名所100選」にも選定されている桜スポットで毎年、桜のライトアップを楽しみに大勢の方が訪れます。しかしこれが中止になったことで、純子さんの目から見ても参拝者の滞在時間は減少し、街から活気がどんどん失われていったそうです。純子さんも何かしなければという気持ちになり、夜に飲食しながら境内の桜が楽しめる「桜寺栖」を企画しました。
今では、昼はオープンテラスとして、春の夜にはしだれ桜を眺めながら優雅に食事とお酒を楽しめる場所として人気です。宿の中とは異なる雰囲気が感じられ、桜の季節以外でも参拝者の休憩スペースとして活用されており、滞在者の心のオアシスとなっています。
お寺ならではの体験である「お経体験」「写経体験」だけではなく、覚林坊ならではの体験プランも充実しています。
朝のお勤めの後、本堂や文化財の庭園を眺めながら行われる朝ヨガは、小鳥の声と、身延山の読経や鐘の音をバックに、清々しい非日常を感じさせます。
初心者でも気軽に体験できるプログラムが約1時間。心も体もリトリートできます。
その後いただく、体に優しい朝食も魅力の一つ。お楽しみに。
早朝ヨガプラン
早朝ヨガプラン
着物体験
着物体験
文化財に匹敵するほどの酒蔵の御頭首のお宅が、壊されて介護施設になるかも知れないという話があり、その話を聞いた純子さんが、元々から思っていた身延山を元気にしたいという気持ちと、身延山の入り口なら歩きたくなる街づくりをテーマにした、身延山活性化のきっかけとして最適であると思ったことから着手した新しい取り組みです。
やはり立地が身延山の入口のお宅ですし、歴史や文化の凝縮したこだわりの建物なので、できる限り残しながらリノベーションして、日本人でも目にすることの少ない貴重なお屋敷を、一日一組一棟貸しでお貸しし、自然の中で文化に浸りながら、身延山を堪能していただける取り組みです。
迎賓館 えびす屋
迎賓館 えびす屋
迎賓館 えびす屋
迎賓館 えびす屋
併設した「農カフェ ZENCHO」は、地域の方や多くの方々に、楽しんでいただけるよう、ローカルガストロノミーをコンセプトにしたカフェです。
名前の由来は、当時の御頭首の「望月善長」さんからお名前をいただきました。
ほうとうラグー
春菊ペーストのもち麦リゾット
ほうとうカルボナーラ
4年前の滞在をきっかけに移住した遠藤さんは、今では中心的なスタッフになったそうです。女将や住職から身延が置かれた現状や課題、そして覚林坊の方々が持つビジョンを聞いて、「この土地だったら自分がやりたいことができるかもしれない」と思いました。「さまざまな立場の人たちが気持ち良く過ごせる地域の中核として、宿坊を機能させていきたいです」
遠藤さんのように他地域からきた若者のおかげで、今後に向けてお寺やまちが『変化する部分』や、反対に『残していく部分』をより鮮明に考えることができました。また宿坊やお寺、身延のまちを次世代につなげていくためには「時代に合わせた変化を受け入れ、変わることを楽しみたい」と、是皐さんたちは話します。
そんな覚林坊が目指すのは、「身延山のリーディングテンプル」です。
「先ほど『残すものと変化させていくもの』の話をしましたが、僕たちは身延を単なる観光地にしたいわけではなく、日本文化や信仰、観光も兼ね備えた、賑わいのあるお山にしたいんです」
宿坊は『お寺に泊まる』という気軽な文化体験を通じて、宗教を身近に感じてもらえる、新しい時代の“布教”になるのではと感じています。
「覚林坊」副住職 樋口 是皐(ぜこう)氏
「カメラマン:栗原 洋平」
「覚林坊」大黒(女将)樋口 純子氏
「カメラマン:栗原 洋平」
「覚林坊」 遠藤 史哉 氏
「カメラマン:栗原 洋平」
打合せの様子
「カメラマン:栗原 洋平」
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施設情報
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やまなし観光推進機構職員が取材しました。各お宿の魅力をご紹介します!
エリアでの検索も可能です。
時代に合わせた変化を遂げる宿坊 「覚林坊」の新たなる可能性【身延町】