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更新日:2024年1月29日

イノベーターたち

山梨のいちごを盛り上げるイノベーターたち【苺屋あとりゑ 木之瀬翔さん・有香さん×葡萄屋Kofu 古屋浩さん】

笛吹川の恩恵を受けた肥沃な大地が広がる甲府市上曽根町で、2022年にオープンしたいちご狩り農園「苺屋あとりゑ」。若手いちご農家夫妻が生み出す高品質のいちごや新しいアイデアは、開業間もないながら各所から注目を集めています。その「苺屋あとりゑ」が、レーズンサンドや季節の果物を使ったスイーツなどが大人気の「葡萄屋Kofu」創業者である古屋浩さんと共にいちごの各種ドリンクを開発し、SNSを中心に盛り上がりを見せています。
そんな山梨のいちごの魅力を新しい形で表現する2組に、話題のドリンクの開発秘話と、これからの山梨のいちごの展望についてお聞きしました。

木之瀬翔さん・有香さん

 

苺屋あとりゑ
木之瀬翔さん・有香さん

農学部卒業後、民間の種苗会社でいちごの研究・種苗生産の経験を経て、2022年にいちご狩り農園「苺屋あとりゑ」をオープン。14品種のいちごを栽培・販売するほか、園内や各地イベントではキッチンカーでオリジナルドリンクも販売。

 

古屋浩さん

 

株式会社プロヴィンチア
代表取締役 古屋浩さん

「葡萄屋Kofu」および「葡萄屋kofuハナテラスcafé」を運営するほか、多くの飲食店のコンサルティングにも携わる。果物の魅力を引き出したスイーツに定評があり、「葡萄屋Kofu」のレーズンサンド、「葡萄屋kofuハナテラスcafé」の季節の果物のパフェで全国的人気を誇る。いちごのシーズンには「葡萄屋kofuハナテラスcafé」にて「苺屋あとりゑ」のいちごを使ったパフェが登場。

目次

 収穫1年目で果たした衝撃の出会い

―木之瀬さんご夫妻と古屋さんが出会ったきっかけは何ですか?

イノベーターたち

古屋さん:確か最初に会ったのは2022年の11月だったと思います。木之瀬夫妻と僕の共通の知り合いで、山梨の地域振興に携わる知人がいるんですが、その人たちの紹介がきっかけでした。話すとすぐに打ち解けて、「じゃあまずいちご見せてよ!」という話になりました。その2~3日後には本当にハウスに行ったんですけど、とにかく衝撃でしたね。

翔さん:あの時はハウスができて1年目の年で、間もなく1作目のいちごの収穫がはじまるタイミングでした。

―どの点が衝撃だったのでしょうか?

古屋さん:まずハウス。とてもしっかりした設備で、これは本気だな…と思い知らされました。次に、その時試食させてもらったいちご。確か『かおり野』だったと思うのですが、とにかく香りが良くて。

いちごハウス内の様子

有香さん:その時は農家として収穫するのは1作目でしたが、私自身は前職や大学での経験を含めると8作目だったので、栽培技術や味には自信がありました。

古屋さん:後日『スターナイト』と『ベリーポップすず』も試食させてもらいましたが、これはすごい…!と改めて実感しましたね。特に『スターナイト』は、多くのシェフが使いたがるんじゃないかな。香りの変化が面白くて、最初頬張ったときはいちごの香りなんですが、後味にはぶどうのような余韻が残るんです。

 始まりはいちごミルク。ハイレベルな製法で生み出された絶品シロップ

―いちごを使ったメニューはさまざまありますが、なぜドリンクを作ろうと思ったのでしょうか?

いちごミルク

翔さん:もともとは僕が美味しいいちごミルクを作りたかったんです。小さい頃はよく安いいちごを買ってきて、砂糖と牛乳と一緒につぶして飲んでいたのですが、今の時代いちごミルクを作るためにわざわざいちごを買わないじゃないですか。それなら、いちごミルクの素を開発すれば簡単にいちごミルクが作れるし、お客様にもすぐ提供ができるのではないかと考えたのが発端です。その想いを古屋さんに相談したら、スゴいいちごシロップを開発してくれました!

有香さん:このシロップはお客様からも評判で。ウチには飲食関係の人もいらっしゃるのですが、「このシロップはどうやって作ったの!?」とよく聞かれます。

木之瀬ご夫妻

―どのような味わいを目指して、シロップを開発したのでしょうか?

いちごシロップ

古屋さん:ジャムではない、いちごのフレッシュな香りがダイレクトに感じられる味わいのシロップに仕上げました。レシピ開発というと感性が大事のように思われますが、僕は科学的な理論に基づいて開発を行います。香りや味の成分を理解し、それに適した温度や圧力、味のバランス調整を行うことで、乳製品と合わせてもいちごが主役をはれる凝縮された味わいになるのです。

その後、木之瀬夫妻から「キッチンカーを買ったから、それで開発したいちごミルクとスムージーを売りたい」という話を聞きました。それなら、「僕の知り合いにSTARBUCKS COFFEEでフラペチーノ開発に携わった

『松田賢哉』さんという方がいるので、彼を巻き込んでしまおう!」と提案しました。さっそく開発したシロップを松田さんに送ったら、すぐ「これは何なんだ!」と問い合わせがきましたよ 笑。

古屋さん

 

翔さん:古屋さんのおかげで松田さんという素晴らしい方と出会い、フローズンドリンク『Hyoka』シリーズが完成しました。初めて飲んだ時、想像以上の味わいにビックリしたのを覚えています。一般的なフラペチーノは濃厚で量が多いので、僕は大人になるにつれ飲み切るのが辛くなってしまったんですけど、『Hyoka』シリーズは控えめな甘さとフレッシュないちごの風味が絶妙で、量もちょうど良いんです。まさに大人におすすめのフローズンドリンクです。

Hyokaといちごミルク
(写真左)フローズンドリンク『Hyoka』、(写真右)いちごミルク

 イノベーターたちが考える「山梨のいちご」のこれから

―日本にはいちごの名産地がいくつかあります。その中で山梨のいちごの認知度を高めていくためにはどうしたら良いと思いますか?

有香さん:山梨にはいちご農家が少なく、高齢化も進んでいるので、いちご単体で推していくのは正直難しいと感じています。その打開策として、生産農家が多い桃やぶどうと連携して、夏は桃、夏から秋はぶどう、冬から初夏はいちご、というように一年中フルーツが楽しめる県として推進していけば、いちご栽培に新規参入してくれる人が増え、活路が見いだせるのではないかと思っています。

木之瀬有香さん

 

翔さん:いちご農家を始めるとき、山梨か妻の出身地である埼玉かで悩みましたが、最終的に山梨を選びました。それは、観光資源である富士山があるからです。また、妻が言うように山梨にはいちご農家が少ないので農家の共同体がないのですが、それは逆に考えれば独自の経営方針で運営できるということです。山梨のいちごを他県と並ぶものにするのであれば、いかに地の利を生かし、資本主義を脱却して、個性的でワガママを貫き通せるいちご農家になれるかがキーポイントだと考えています。

木之瀬翔さん

 

古屋さん:料理を作る側の人間としては、産地とは何か?ということをよく考えます。全国の桃の生産量No.1は山梨ですが、都内で「桃の産地と言えば?」と聞くと、実は「山梨」より「岡山」と答える人の方が多いです。つまり、消費者にとっては作っている量が多いかどうかではなく、品質や食べたときの「美味しい!」という記憶の方が大事なのです。山梨には豊かで美味しい水源があり、果物の生産ではアドバンテージになります。いちごも桃もぶどうも全部タッグを組んで、品質の良いものを追求していけば、自然とファンは増えるはずです。『苺屋あとりゑ』はその起爆剤たり得る存在であると、私は信じています。

イノベーターたち

 

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