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更新日:2021年11月16日

枯露柿

甘かったのは「枯露柿」だけでなく、自分の考えも甘かった…。【甲州名産「枯露柿」】

甲州市の晩秋の風物詩として見られる、オレンジ色の「枯露柿(ころがき)」のカーテン。11月上旬になると、甲州市内のあちこちで、軒先に吊るされた柿を見かけることがあると思います。

「枯露柿」とは、簡単に言うと渋柿を乾燥させた干し柿のことですが、手間ひまをかけて、一つひとつ丁寧に作らなければ、甘くて柔らかい枯露柿にはなりません。ただ、軒先に吊るしていれば出来るものだと思っていましたが、甘かったのは枯露柿だけではなく、自分の考えも甘かったです…。

今回、その枯露柿づくりを体験してきましたので、その様子や作り方などをご紹介します。
(取材日:2021年11月)

 

枯露柿

 信玄公も食した!? コロコロ「枯露柿」

 「枯露柿」は武田信玄公が陣中食として、干し柿の生産を奨励したことから始まったと言われており、天日で乾燥させるとき、実全体に太陽の日が当たるよう、「コロコロ」転がして向きを変えたころから、「転柿」、「枯露柿(ころがき)」という名前がついたとも言われています。

 同じ干し柿でも水分が50%前後で柔らかいものを「あんぽ柿」、水分が25%から30%位で「粉(こ)」といわれる甘み成分が結晶化し、白い粉を吹いたものが「枯露柿」と呼ばれています。

 枯露柿に使われている柿は、主に甲州市産の「甲州百目柿」で、もともとは「甲州百匁柿」と呼ばれ、百匁(ひゃくもんめ/約375g)という名前の通り、1個350〜400gにもなる大きな渋柿です。特に甲州市塩山の松里地区は、大きな甲州百目柿がとれたことから、枯露柿の名産地として有名で、生産が行われる11月上旬~12月初旬になると、民家の軒先や庭などが、オレンジ色の枯露柿のカーテンで彩られます。

 

「枯露柿」は、軒先に吊るしているだけで、出来るものではないんです!!

 手間ひまと愛情をかけて作る、甘くて柔らかい「枯露柿」の作り方をご紹介します。

甲州百目柿

1.【収穫】

 11月上旬、赤くなった柿の柄の部分をT字に残して収穫。

 

2.【皮むき】

 包丁などを使って、柿のヘタと上部のデコボコした部分を取り除き、ピーラーなどを使って皮を剥きます。

枯露柿皮むき 子供

枯露柿ピーラー皮むき

ピーラーを使うと小さな子供でも安心です

枯露柿皮むき

綺麗にむけました

 

 

枯露柿燻蒸

3.【防カビ・殺菌処理】

 タコ糸やビニール紐を輪っかに結び、紐の両端に柿の柄を結んで竿に吊るします。ビニール等で覆い、食品用の燻蒸剤にて約30分燻蒸し、防カビ・殺菌処理をします。

※ご家庭で行う場合は、食品用アルコールや熱湯に浸けることでも代用可能。

 

枯露柿竿掛け

タコ糸の両端に柿を結び竹竿に掛けます

竿掛け

竹竿にたくさんの柿が実りました

 

 

天日干し

4.【天日干し】

 燻蒸した柿を竿に吊るして天日干しにします。 雨に日はシートをかけるなど、柿が濡れないようにします。

 ※柿同士が触れないよう、互い違いに干すことがポイント

 

竿掛け

燻蒸された柿を掛け替えます

菱丸天日干し

「武田菱丸」も柿と一緒に天日干し

 

 

芯切01

5.【芯切り】

 約14~20日ほど乾燥させた後、あんぽ柿(表面が乾き、中が柔らかくなった状態)になったら、柿の果肉と種をつなぐ繊維を切り離すイメージで軽く2~3回揉みます。

芯切02

一つひとつ丁寧に揉んでいきます

芯切03

芯切りをされた柿

 

 

棚干し

6.【取り込み・棚干し】

 竿から下ろし、すだれ等に平置きし、天日干しします。以降、7日~10日間、揉み作業とコロコロ転がす作業を毎日繰り返し、乾燥させ形を整えます。この作業が枯露柿の名前の由来となりました。

棚干し転がし

「すだれ」に平置きされた柿

転がし

白い粉が吹いてきます

 

 

枯露柿完成

7.【袋詰め・箱詰め】

 十分に乾燥し、「粉(こ)」と言われる甘み成分の結晶が、表面に出て白くなったものから、袋詰めし化粧箱に詰めて完成です。

 

 

 

 いかがだったでしょうか。甘くて柔らかい「枯露柿」を作るには、一つひとつ丁寧に手作業でつくられていることが、お分かり頂けたかと思います。完成した枯露柿を太陽にかざすと、透けるような飴色に輝きます。表面の糖分の白い結晶はきめ細かく、肉厚で食べ応えのある食感に、時間をかけて凝縮された柿の濃厚な風味と甘さが口いっぱいに広がります。

 

  また、この時期ならではの、オレンジ色の「枯露柿カーテン」の景色もおすすめです。今回、「枯露柿づくり体験」を行った、塩山駅北口の正面にある旧高野家住宅「甘草屋敷(かんぞうやしき)(外部リンク)」には、たくさんの枯露柿が吊るされています。太陽の光が南側から注がれるお昼前後の時間帯には、建物の中から幻想的な風景をみることもできます。ぜひ、訪れてみてはいかがでしょうか。

甘草屋敷内観

「枯露柿」の影が畳に映る幻想的な風景

 

 

 

 

取材後記

じゃれ合い 今回、はじめて「枯露柿」づくりを体験しましたが、完成までに一カ月以上もかかり、天気とも相談をしながらの作業になるため、とても大変です。干し柿の最高峰と言われ、贈答用として扱われている理由がよく分かりました。聞いたところによると、甘草屋敷の枯露柿は甲州市の職員の方々が、業務の合間を見て、日々、管理・作業を行っているそうです。

 食べ方としては、そのまま頂くのも美味しいですが、カットした「枯露柿」をクリームチーズと合わせ、甲州ワインと一緒に頂くのが、個人的にオススメです。ぜひ、お試しください。

写真/文 大藤雅興 ※一部写真 甲州市提供

 

 

 

 

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葡萄が織りなす風景

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