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更新日:2022年7月15日
日本最大の料理レシピ投稿・検索サービスの「クックパッド」。“毎日の料理を楽しみにする”というミッションのもと、生産者と生活者をつなぐ生鮮食品のEC「クックパッドマート」なども展開しています。2020年秋にJapan CEOに就任した福崎康平(愛称:こっぺ)さんは、今年の3月末に山梨県甲府市に移住しました。なぜ山梨を選んだのか?その経緯を独占インタビューしました。3回に渡ってご紹介します。
きっかけは、昨年のGW。コロナ禍で都会で息をするのが苦しくなった。都会では24時間マスクを着けてないと生活できないくらい、人と人の距離が近い。田舎だと車の中だったり、人が少ない公園などプライベートゾーンがある。それがいいなと思った。
昨年の初めに車を買ったので、いろんな場所へ出かけたらまた価値観が変わるかもしれないと思い、福井にいる祖父の家に車で出かけた。
福井へは、中央道を通っていき、長野に2泊した。そこの空気が、今まで食べてきたもの、飲んできたものと全部違うと感じた。横浜に戻って友人に旅の話をしたら、山梨の北杜も良いですよとすすめられて、夏に北杜に行った。北杜市長坂にあるフレンチと蕎麦を楽しめるオーベルジュに泊った。そこでの食事もおいしくて衝撃を受けた。
長野といい、北杜といい、自分がいままで感じたものと全く違う食事が食べられることに感動し、景色もよかったので、直感的に帰りたくない、北杜に住みたいと思った。
都心への距離も考えていたところ、甲府のマンションと縁ができて、昨年12月に契約した。探し始めてから2か月ぐらいだった。
甲府の夕暮れ
ひとことで言うと最高!
おもしろいなと思ったのが、僕がそういうお店を選んでいるだけかもしれないんだけど、白米を出すお店が少ない。地元の小麦を使ったパンとか100%地元産の蕎麦とか、玄米、古代米が多いと感じる。
穀物に何を食べるかは大事だと思っている。世の中がおかずの数を増やしたり、手間をかける文化になってきているけれど、そうすると、料理は難しくなっていく。もっとそのままの穀物を食べる文化になれば、食事はより簡単になる。穀物自体にフレーバーがあるので、味の違いを楽しめたらいいと思う。
甲府には、地元の新鮮な野菜を活かした料理とワインやお酒があり、毎日飲みにいきたい店もたくさんある。
都会は精製されたものを食べていて、味噌よりも醤油が好まれる。玄米よりも白米、繊維質なものは好まれない傾向にある気がする。でも自分はそういうのじゃないものがいいなと。そう思っている。
おもしろいと思うことがいくつかある。まず、料理とか食文化を広くとらえると、ワインは入口になるものだと思っている。ワインの搾りかすは、牛や豚の飼料や肥料になっていて、実はその循環の方がすばらしいと思っている。
パン屋さんに間借りしてフォーを作ってる人がいたり、ワイナリーでマルシェを開催したり、いろいろなことが繋がっている。
1人の人が考えた循環のしくみをみなさん実践されているなと。SDGsということばが出る以前から当たり前にやってきているのだと思う。それに興味がある。
料理を振る舞うこっぺさん
将来は、自分が飲食店を持つのではなくて、自分用のキッチンの作業場を作ってそこに食べに来たい人がいたら勝手に食べてっていいし、商品を置きたかったら置いていいし、そういうコミュニティみたいな場所が作れないかなと考えている。スペインのバルのように、おいしいごはんで人を呼べないかなと考えている。
ヨーロッパではシェアキッチンが、甲府ぐらいの規模の都市で数百か所あったりする。そこは地域に住むおじいちゃんたちが使っている。週末、好きなワインを持ち寄って、飲みながら1日中みんなで料理するというカルチャーがある。そういうことにも興味がある。
甲府への移住は、まだ第1弾が終了したところで、もう1か所山梨県内で家を探している。まだまだ僕の興味は尽きない。
こっぺの旅はまだつづく…。
こっぺさんにお話を伺いながら、学生時代に世界を巡ったときに感じた感覚の鋭さ、感受性の豊かさに驚きました。また探求心が旺盛で、仕事も人生も思いっきり楽しんでいる姿勢に刺激を受けました。
移住先として山梨に魅力を感じ選んでくれたことを地元の人間としてうれしく思います。こっぺさんが作ろうとしているコミュニティができれば、そこはおいしい料理を通じて、集まる人を笑顔で幸せにする場所になるはず。今後のこっぺさんの山梨での活動も楽しみです。
こっぺさんプロフィール
クックパッド株式会社
執行役 Japan CEO 福崎康平(ふくざき こうへい) 氏
取材・文/佐々木