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更新日:2024年9月15日
山梨県埋蔵文化財センターの久保田健太郎さんが「甲府城」の奥深い魅力について紹介する新企画がスタート。歴史好きな方はもちろん、歴史が苦手な方にこそぜひ読んでほしい連載です。久保田さんの解説で甲府城をもっと知りたくなること間違いなし!第2回は石垣の魅力について。
甲府城について紹介するのは・・・
山梨県埋蔵文化財センター
副主査・文化財主事
久保田 健太郎(39歳)
石器が専門だが、同じ石だからという理由で(?)、山梨県庁入庁1年目から甲府城の石垣の担当になる。以来、石垣の呪いにかかり、全然関係ない遺跡の発掘をしても高確率で石垣がみつかる。
皆さんお待ちかねの石垣のはなしである。
甲府城の見どころって、石垣しかないの?…なんて聞こえてきそうだが、ここからの何話かを読んだらもう、そんなことは絶対言えない。なんたって、その石垣が面白いのである。
石垣の魅力は、「何年に誰がどうした」なんていう歴史の予備知識がなくても十分楽しめる。だから「歴史って、嫌いなんだけど…」という人にも、必ずささる。
歴史嫌いを自覚している人にこそ、読んでほしい。そして、甲府城を目指して、山梨旅行に出かけよう!
私がおススメする甲府城を楽しむ1つめのポイントは、「石垣の古さにドキドキ」である。
甲府城の石垣づくりのワザには、随所に「お城の石垣づくりの歴史の中でも、特に古い時期の石垣」であることを示す証拠が隠れている。
まずは下の写真をみてほしい。
私ではない。その後ろの石垣をみてほしい。
久保田のあたりを境に、石垣の特徴に違いがあるのがわかるだろう。違いを3つほど挙げられると、とてもいい。よく見てみよう。
この特徴の違いが生まれる理由は、築造された時期の違いだ。
一方が甲府城築城時のもので江戸時代が始まる前の石垣、もう一方が江戸時代の中頃以降に、修理のために積み直されたと考えられている石垣だ。
さて、写真の右側と左側、どっちが甲府城築城時の古い石垣かわかるかな?
答えは…
向かって左側の石垣だ!
お城の石垣づくりの歴史は、巨石をほとんど加工せずにそのまま積み上げたものが最も古く、段階的に石材の加工度合いが高まっていく。ちょうど、写真の左側の石垣が古い時期の石垣、右側の石垣が新しい時期の石垣の特徴にピッタリあてはまる。
そう、甲府城築城当時の石垣は、この古手の石垣の仲間だといえるのだ。※
石をほとんど加工しないで積む古手の石垣は、「野面積み(のづらづみ)」と呼ばれている。甲府城には、この「野面積み」の石垣が城内全域によく残っている。新しい時期の石垣をみつけるのが難しいくらいだ。
古い石垣「野面積み」を堪能する。これが、甲府城の楽しみ方その1なのである。
ここまでは、私たちブンカザイ(文化財)の世界のお話しだ。甲府城にはたしかに「野面積み」の石垣がよく残っている。次回以降も紹介するが、この「野面積み」の石垣には、石垣づくりの様々なワザをみることができる。それらはぜひ堪能してほしい。
でも、甲府城を訪れればわかるはずだ。文化財的な価値だけ探し歩いたのでは、甲府城の「野面積み」石垣を味わい尽くしたとはいえない。
大小の巨石を荒々しく、それでいて平たい面を表側にきれいに揃えて積み上げた甲府城の「野面積み」石垣には、豪快さと繊細さを併せ持つ力強い迫力がある。
しかも、その石垣が、甲府城が立地する小山を3段構えで囲っているのだ。
その姿は圧巻である。
小山を囲う3段構えの石垣
「野面積み石垣」だからこそ味わえるカッコよさ。それを存分に味わっていただきたい。
次回は、石垣の角の部分を組み上げるワザに注目する。ここにも、古手の石垣特有の積み方をみることができる。
※野面積みでも、積み方によっては新しい時期の石垣もある。「石材への加工無し→すべて古い」ではないので注意が必要。
甲府城の一番高いところにある天守台も、全て「野面積み」の石垣
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施設情報 |
山梨県埋蔵文化財センターでは、昨年も大盛況だった全5回のウォーキングイベント「甲府城が大好きな私たちと歩く、城・城下町さんぽ2024」を開催しています。 次回は2024年12月7日(土)、第4回のテーマは「今に残る甲府城下町のおもかげ(1)」です。 実際に甲府城を歩きながら、講師の丁寧かつ軽快なトークで甲府城について楽しく学べます。参加した後は、きっと誰かに話したくなる!? |