昭和49年、釣堀を受け継いだことから、川魚の養殖が始まった「忍沢養殖場」。社長の秋山冨一さんを中心に、家族で運営している養殖場です。「お客様に喜んでもらえることが何よりも大事。最初の頃は使っていただく板前さんに怒られたりしながらも、親身になって教えていただきました。魚は難しいです。どうしたらもっと美味しくなるだろうと、日々研究して気づいたら30年以上。もう仕事か趣味かわからないくらい。協力してくれた地域の皆さんには感謝しています」と秋山さん。8年前より娘婿の佐野真規さんも参加して、現場を盛り立てています。「初めてこの場所を見た時からピンときて、自分がやりたい仕事だと確信しました。魚について、料理人さんと会話することがすごく勉強になっていて、やりがいがあります」と佐野さん。

世界で最も古い歴史を持つ宿として、ギネスブックにも掲載されている「慶雲館」。全館掛け流しの温泉は、1300年前から現在もこんこんと湧き出ているという秘湯です。そこで料理長を務めるのは、小学生の頃から料理人になることを思い描いていたという、佐藤眞司さん。「第27回全国日本料理コンクール」郷土料理部門においては、「国土交通大臣賞」を受賞しました。地元の素材を生かし、季節を感じさせ、その土地らしさを味わえる料理を提供しています。「忍沢養殖場の甲斐あかね鱒は、現地に行ってみたら、びっくりするほどきれいな水で育てていました。泥臭さが全くなく、旨味のあるきれいな脂の入り方をしています。これが食べたい、と来てくれるリピーターのお客さんも多いですよ。秋山さんはものづくりに熱心で地域貢献もしている、尊敬している人です」。

忍沢養殖場は緑溢れる静かな山の中にあり、建物のすぐ横にはきれいな川が流れています。水が豊富な環境で、川の水、湧き水、伏流水の３つの水源を、季節や気候に合わせ、調節して使います。甲斐あかね鱒という名前は、山梨の美しい夕焼け空をイメージして名付けられています。魚たちは水流のある大きな池の中を元気に泳ぎ、まるでスポーツ選手のようにじっくり育てることで、健康でバランスの取れた筋肉質になるそうです。また、締め方にも独自のこだわりがあり、魚にストレスを与えず、優しい方法できれいに血抜きをするため、鮮度が良く、臭みの全くない状態での提供を実現しています。