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更新日:2024年10月16日
山梨県埋蔵文化財センターの久保田健太郎さんが「甲府城」の奥深い魅力について紹介する新企画がスタート。歴史好きな方はもちろん、歴史が苦手な方にこそぜひ読んでほしい連載です。久保田さんの解説で甲府城をもっと知りたくなること間違いなし!第3回は石垣の古さは角を見よ!
甲府城について紹介するのは・・・
山梨県埋蔵文化財センター
副主査・文化財主事
久保田 健太郎(39歳)
石器が専門だが、同じ石だからという理由で(?)、山梨県庁入庁1年目から甲府城の石垣の担当になる。以来、石垣の呪いにかかり、全然関係ない遺跡の発掘をしても高確率で石垣がみつかる。
前回に引き続き、甲府城の石垣の古さを堪能してほしい!
今回の注目ポイントは「石垣の角のところ」である。ちなみに、私たちは石垣の角の部分を「グウカクブ(隅角部)」と呼んでいる。
甲府城の石垣は「お城の石垣づくりの歴史の中でも特に古い時期の石垣」だ。
どの石垣にもその特徴を読み取ることができて、噛めば噛むほど、その旨みを楽しめる。中でも石垣の角のところは、特にその旨みが凝縮されているといっていい。
山梨に旅行できたら甲府城!そして甲府城にきたら石垣の角のところを観察しよう!
石垣の角をみる時に、知っておいてほしいことがある。
「算木積み」と呼ばれる、石垣の角の部分にみられる特徴的な石積みのスタイルについてだ。
「算木積み」でつくられている石垣の角
上の写真は、甲府城の中でも新しい時期の石垣である。前回のお話でも登場した「新しい時期の石垣」の箇所だ。
石は四角く加工され、一段一段、隣どうしをピッタリくっつけて積まれている。その角の部分を、目を凝らしてよくみてほしい。
横長の石を左右交互に積み上げていることにお気づきだろうか。
この積み方を「算木積み」という。
この石垣の場合、「算木積み」の石も綺麗に四角く加工されていて、真横からみると、長い・短い・長い…の順番がしっかり守られている。
しかも、「短い」のま隣には、同じような「短い」石がピッタリはめ込まれている。その石は「隅脇石(すみわきいし)」とよばれている。
左右交互に積み上げられる「算木積み」の特徴は、甲府城の古手の石垣にもみることができる。
しかし、下の石垣をよく見てほしい。この「算木積み」は、さっきの石垣の「算木積み」と、まったく同じだろうか?
左右交互の順序が乱れる甲府城天守台の「算木積み」
左右交互に積まれているはずの角の石の順序はどうだろう?
下から「右、左、右、左、左、右、左、左」という具合に、順番が乱れている。それに、「隅脇石」がない。
これは、古い時期の「算木積み」の特徴だ。
もう1つみてみよう。
縦長の石の配置や、三角形の石を使った甲府城の石垣の角
ちょっとバランスが崩れたら倒れてきてしまいそうな平たい石を立てて据えてみたり(写真3の白線でかこった石のうち、上側)、三角形の石を使ってみたり(写真3の白線で囲った石のうち、下側)しているのがわかるだろうか。
三角形の石は、上の石との接点が1点だけになってしまい、バランスをとるのが難しいように私たちは感じてしまう…。
こういう石の置き方も、新しい時期の石垣にはみられない、甲府城の石垣の古さの証しだ。
きっと、石を四角く加工しない「野面積み」の石垣であるからこその特徴で、使おうとする石材の据わりに合わせた臨機応変なワザなのだろう。
「算木積み」は高い石垣をもつ城のほとんどにみることができる。
だから、お城を訪れた時は、必ずチェックしてみるといい。
山梨観光の際にも、甲府城の石垣の角は必見である。
この3点は、古手の石垣の角にみられる特徴なので、みつけてみよう!
ところで、甲府城はこれまで「元禄の大地震」や「宝永の大地震」、「安政の大地震」などを経験してきた。
それでも、築城期の古手の石垣がよく残ったのはなぜだろう。
そのヒミツについてのお話は、また次回!
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施設情報 |
山梨県埋蔵文化財センターでは、昨年も大盛況だった全5回のウォーキングイベント「甲府城が大好きな私たちと歩く、城・城下町さんぽ2024」を開催しています。 次回は2024年12月7日(土)、第4回のテーマは「今に残る甲府城下町のおもかげ(1)」です。 実際に甲府城を歩きながら、講師の丁寧かつ軽快なトークで甲府城について楽しく学べます。参加した後は、きっと誰かに話したくなる!? |