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山梨県の郷土伝統工芸品として12品目の伝統工芸品があります。甲州貴石細工、甲州印伝、甲州雨畑硯、甲州大石紬、甲州手彫印章、甲州武者のぼり・鯉のぼり、西島手漉和紙、親子だるま、甲州鬼瓦、市川大門手漉和紙、山梨貴宝石、富士勝山スズ竹工芸品。いずれも山梨の風土と人々の暮らしの中ではぐくまれ、受け継がれてきたものです。
甲州印伝
手漉き半紙
○ 主として日常生活の用に供するものであること。
○ 製造過程の主要部分が手工業的であること。
○ 伝統的な技術・技法により製造されたものであること(50年以上の歴史)
○伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されているものであること(50年以上継続的に使用)
等の条件を満たしたものが選ばれています。
崇高な輝き、磨き上げられた造形美
水晶・めのう・ひすい等の原石から、深肉彫り、浮き出し彫り行なって貴石を造る
約1000年前、昇仙峡の奥地金峰山で水晶の原石が発見されたことが、甲府での水晶細工の起源です。鉄板の上に金剛砂をまいて水晶を磨く方法を考案したのが水晶細工の始まりでした。硬度が高く、加工は非常に時間を要します。数珠や帯留め、根付けなどに加工し産地として確立していきましたが、昭和50年代のドルショックを境に高度な技術を駆使した国内向けの美術品として、さらにその質を高めています。
主な産地:甲府市及びその周辺
文様が奏でる古色の交響曲シンフォニー
鹿皮に漆で紋様を施した山梨独特の革工芸製品。
印度(インド)装飾革が幕府に献上された際に名づけられたいわれ、華麗な色に刺激され後に国産化されたものを印伝と呼ぶようになりました。鹿革は、体になじみ、強度を備えていることから武具にも盛んに使われ、戦国時代、武将たちの勇士を飾ってきました。現在製法が伝わっているのは甲州印伝のみです。鹿革に漆で模様を付けたものが特徴で、時がたつほど色が冴え、深みのある落ち着いた光沢になってきます。
主な産地:甲府市
書家の心を魅了する漆黒の美
石としては抜群の材質で墨ののりが良く書道愛好家に人気が高い
元禄三1690年、雨宮孫右衛門が身延山参詣の途中、富士川支流の早川河原にて黒一色の流石を拾い、これを硯にしたことが始まりとされています。以来、硯づくりの研究を重ね、将軍一橋公に献上したことからその名が広く知られるようになりました。中国硯にも勝る良石として古来からその石質が高く評価され代々数多くの硯工を輩出し、現在までその高い品質・技術が伝承されつくりつづけられています。
主な産地:南巨摩郡富士川町
真心で織り上げた手作りの暖かさ
丈夫で軽く、柔らかく、絹特有のすべりの良さと堅牢で絹織物と紬織物の両面の良さを併せ持つ
915年「絹を朝廷に献上した」との一文が最も古い郡内地域の織物についての記述です。特徴は丈夫で軽く、柔らかく、そして絹特有のすべりの良さ、なによりも堅牢で絹織物と紬織物の両面の良さを併せ持つ、他の紬織と異なった風合いを持っています。江戸時代末期には租税として物納されたり、富士山を崇拝する富士講の人々や行商人の手によって広く売り出され、改良が重ねられ現在の大石紬に至っています。
主な産地:南都留郡富士河口湖町
祈りの彫り、真心を伝える伝統の技
御岳山系に良質で巨大な水晶鉱が発見・発掘されたことから始まった
印章業の発祥は、良質で巨大な水晶鉱が発見・発掘されたことから始まりました。甲府近郊御岳に水晶加工工場が設立され、以来数多くの加工業者および加工技術が生まれ、水晶印材と同時に板木師よりその彫刻技術が発達し、水晶印はもとより、ツゲ、水牛等の印材も加えて発達しました。特に水晶の手彫印章は、甲州以外の地域では、ほとんど作られていません。
主な産地:甲府市、市川三郷町、身延町、他県内一円
子供の成長を願う勇壮な武者絵巻
富士川流域の冷たい水に流され独特の色合いがうまれる
天下泰平を目指す時代に翻った旗指物、吹流しが、江戸時代後半に端午の節句の祝いののぼりとして立てられるようになったのが、武者のぼりの・鯉のぼりの起こりと伝えられています。富士川流域を中心に山梨県では染物が盛んで、江戸時代から変わらぬ技法で100%綿を利用し、下絵も当時からの物を使用しています。国内産の原料で染め上げる染物は、富士川流域の冷たい水で流され、独特の色合いに染められます。
主な産地:南アルプス市
地代のうねりの中で忘れられていた美しい紙
最近は立体的な照明やブライダル用紙に用いられることも
武田信玄の任により、みつまたを主原料にした平滑で光沢の有る、毛筆に適した紙が誕生しました。この紙は西未と命名されました。この後画仙紙を完成させ、全国に先駆けて販売し爆発的に広まり西島和紙は大きく発展をしました。現在でも、作者が望む渇筆やニジミが思いのままに表現できる手漉き雅仙紙や、自然素材を取り入れた和紙の照明、ブライダル用紙など紙の個性を生かした新しい和紙の世界が広がります。
主な産地:南巨摩郡身延町
親の願いをだるまに託して、夢・愛・希望
腹に子だるまがあり、人の目と目が合うように出来ている。
甲州だるまは約400年前、武田信玄の顔を模して作り始めたと伝えられています。一般のだるまとの相違点は、1、白いだるまであること。2、だるまの腹に子だるまが有ること。3、親の目は神棚に上げた時拝む人の目とだるまの目が合うように出来ていることなど。子供の目は真中にあって子供の未来に、自分で目標を持ち真っ直ぐに歩んでほしいと思う親心とか。全国でも珍しい親が子供を思い制作されただるまです。
主な産地:甲府市
人々の幸福を見守り、今、蘇る伝統の美
製品ごとに表情がある。鬼面瓦として人気を博している。
加賀美地区の瓦づくりの起源は、この地域が御勅使川扇状地の先端で、粒子の細かい粘土層が露出していたこと、良質の水が容易に得られたことなどが挙げられます。土練りやかけやぶり、みがき等の伝統技法で作られ、その表情は災いを追い払う気迫にあふれています。全て手作り製品の為、製品ごとに表情があり、鬼のもつ厳しさと能面のもつやさしさがミックスされた鬼面瓦として人気を博しています。
主な産地:南アルプス市加賀美
100年の歩みの中で真心をこめた伝統美
武田家の御用紙として保護され、美術紙、 画仙紙に最適
奈良時代末の記録に紙の産地として甲斐の名が記されています。市川三郷町市川大門には天台宗百坊といわれる程、多くの寺院があり、漉家があったといわれ、この漉屋から漉出される紙が写経などに用いられていました。市川の和紙は武田家の御用紙として、その保護のもと発展し、 江戸の時代においても幕府の御用紙として保護されてきました。原料は「楮」「三椏」を使用し、美術紙、 画仙紙等に適します。
主な産地:西八代郡市川三郷町
煌めきと温もりを持つ名士の技
深い味わいを持った工芸品として注目されている
水晶の原石の発見から水晶細工が盛んになり、 しだいに水晶玉や水晶の置物に加え、ブローチ用の水晶のカットも始められました。研磨技術が大躍進を遂げアクセサリーなど様々なものがつくられるようになってきました。原石を何通りもの工程を経て、熟練した職人の手により、輝きある貴宝石に仕上げていきます。国内最大の宝飾産地「山梨」の発展を支える原動力であり、産業集積地ならではの優れた工芸品です。
主な産地:甲府市及びその周辺
ほのかに香る繊細なスズ竹細工
しなやかで香りが良い。インテリアとしても好評。
スズ竹は、富士山二合目付近に自生しておいるしなやかで香りが良いところが特徴とされる竹です。細かい目で編んだザルは繊細でとてもしっかりしており、実用品としてばかりではなく、インテリアとしても好評を得ています。甲斐国志にスズ竹細工の記述があり、それ以前より富士山からスズ竹を取って、笊籬を作っていたことがうかがえます。生活と身近な素材が融合してうまれた美術品にも通じる工芸品です。
主な産地:南都留郡富士河口湖町